漢方処方等の治療方針について
冷え性を治療していくためには、体が冷えてしまう原因を取り除いてあげることが治療の基本です。なんらかの原因があって冷え性になるため「これを飲めば冷え性が治ります」というお薬は残念ながらありません。体が冷えてしまう原因にアプローチして冷えを改善していくことになります。冷えの原因を取り除いて治療をするにあたり、漢方薬が使用されることが多いです。
冷えの改善に使用する漢方薬
では、どのような漢方薬が冷え性の治療に使われるのでしょうか。
代表的な漢方薬をご紹介します。冷えの原因に合わせて以下のような漢方薬を使用します。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
当帰芍薬散は、女性関連の疾患に非常に多く用いられる漢方薬です。もっとも代表的な女性疾患治療の漢方薬といっても過言ではありません。冷え性の他、月経異常や更年期障害、流産の防止などに用いられます。比較的体力に乏しく疲れやすい方に適している漢方薬です。体が冷えやすい方は体の血(けつ)やエネルギーの流れが滞っていたり、そもそも量が少なかったりします。(血とは漢方では体に栄養を運ぶ役割をする液体のこと)当帰芍薬散はこの血やエネルギーが作られるのを手助けすることで、体の冷えを改善するものです。
十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)
十全大補湯は体の疲れとともに生じる「冷え」に効果的で、 気(き)と血(けつ)の不足を補う役割があります。 気とは目に見えない生命エネルギーの事で自律神経の働きに近いと言われています。 気の流れが悪いと、やる気が出ない・疲れやすい・だるいといった症状と共に体の 循環が悪い為「冷え」を引き起こします。 十全大補湯は胃腸の働きを高め、気と血のめぐりを良くし、 冷えを改善してくれる漢方薬です。体力回復と体の循環に必要な栄養素を補給してくれます。
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)
当帰四逆加呉茱萸生姜湯は手足末端の冷えに効果的とされる漢方薬です。 特に下肢の冷えでお悩みの方やしもやけに効果的です。しもやけの専門薬とも言われ、 長期的に外部から寒冷刺激を受け、定着してしまった冷えを改善する効果があります。 このタイプの冷えは手足末端だけが冷たく、冷えから頭痛や腹痛も引き起こします。 当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、体の内部から温め熱を作るのを助け、 冷えの改善と同時に、頭痛・腹痛・月経痛の改善も期待できます。
冷えを生活習慣から改善
体が冷えてしまうのは、意外と日頃の生活習慣が関係していることがあります。普段の生活によって冷えやすい体が作られてしまうのです。漢方薬での治療ももちろんよいのですが、根本的な生活習慣の改善も冷え性の治療には欠かせません。
- 睡眠リズムを整える
- 人の体は、眠りに付く前に体温が下がるようにできています。日によって起きる時間や寝る時間がバラバラだと体温調節がうまくいきません。
- 運動をする
- 体を動かし筋肉を刺激することで、全身の血液の流れをよくすることができます。筋骨隆々(きんこつりゅうりゅう)な方に冷え性の方がいないのは、筋肉の働きによって血液の流れがよくなっているためです。筋トレや有酸素運動を日課に取り入れてみましょう。
- お風呂につかる
- お風呂につかることは、簡単に体を温められる方法です。血管が広がるため血流がよくなるので指先や足先まで温めることができます。