COVID19後の嗅覚、味覚障害について
今月の日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会誌において、東京慈恵会医科大学の森先生の講座が掲載されました。森先生は筑波大学のご出身であり、院長も学生のころを知っている方です。慈恵会医科大学に入局され嗅覚の分野では日本のトップランナーといっても過言ではない有名な方です。一介の開業医からすれば雲の上のような存在なのです。
それはさておき、本題ですがCOVID19後の嗅覚障害ですがオミクロン以降は10%前後となっており、初期のころと比べるとだいぶ頻度は落ちています。感染により嗅上皮における嗅神経細胞が障害され、嗅神経細胞のターンオーバーにはおよそ1か月かかることからも、嗅覚障害は数週間以内に軽快することがよくわかります。それ以外にも嗅上皮における慢性炎症や、中枢性嗅覚障害も示唆されていますがメカニズムはまだわかっていないようです。
味覚障害はその大半が風味障害(嗅覚障害に伴う味覚障害)とされていますが、味細胞の障害や唾液の性状変化、亜鉛欠乏などがあるとされています。亜鉛欠乏については当院でもCOVID19感染後の味覚障害の原因の一つとしてとらえ、積極的に採血を行っており亜鉛補充により味覚障害が改善した症例は複数経験しています。
森先生の講座を読んでも、まだまだ未解明な部分は多く治療法が確立したとはいえないようです。えらい先生方には研究を頑張ってもらい、こちらは地域医療に少しでも貢献できるよう頑張りたいと思います。