防風通聖散出荷停止だってよ!飲んで痩せるの??
漢方大手のツムラが防風通聖散エキス顆粒の出荷停止を発表しました。急激な需要増が理由とのことですが…痩せ薬と認知され流行っているのが原因ではないかと勝手に思っております。
さて当ブログでも書いたことがありますが、一般的な人で防風通聖散を飲んで痩せることはないと思っています。実際外来に来ている人で防風通聖散を飲んでいて、モデル体型の人をみたことはありません。まぁ、いわゆる普通体型の人が多いです。では、なぜ防風通聖散が「痩せ薬」として認知されているかというと、まぁCMの影響が大いにあると思います。「燃やすと出す!だから痩せる」とかありますよね。
じゃあ、それが嘘か?というとそんなことはなくて、2008年に出た「メタボリックシンドロームに対する防風通聖散の有用性の検討」という有名な論文があります。内容はというと防風通聖散とプラセボ(偽薬)投与を比較して、防風通聖散がプラセボと比較して有意に内臓脂肪を減らしたというものです。じゃあ内臓脂肪が多い人は飲めば痩せるのか?というと…この論文には色々条件があります。まずこの実験に参加したひとのBMIの平均は36.5です。ピンと来ないかもしれませんが身長160㌢であれば、93.4kg!!身長170㌢であれば105.5kgというレベル。医療関係者の方ならわかりますが、BMI35を超えると全身麻酔で加算がとれるので、かなりやばいレベルの肥満の方を対象としています。ちなみにWHOの肥満はBMI30以上です。
次に(ここも重要)、飲むだけで痩せたか?というとそういうことはなくて…実験参加者は食事療法(1200kcal/日)、運動(1日5000歩以上)+ストレスマネージメントを受けています。普通に考えてBMI35以上の人が1日1200kcalだったらそりゃ痩せるよね?と思うわけです。しかもちゃんと運動もしています。防風通聖散の面白いところはプラセボと比較して内臓脂肪が減ったことに加えインスリン抵抗性改善が認められたことです。そういう意味では「痩せ薬」としての効果はあるとは思いますが、あくまでも対象のなった人の平均BMIは36.5です。
では、実際目にする防風通聖散を飲んでいる人はというと…とてもじゃないですけどBMI36.5の人ではないです。女性に関して言えばいわゆる標準といわれるBMI22前後のひとが大半なのではないでしょうか?そういう人は「防風通聖散を飲んで痩せない」とは断言はしませんが、まぁ飲んで便秘が改善されて一時的に体重は落ちるかもしれなけど…だと思っています。
防風通聖散は基本的に体を冷やす薬なので、冷え性だけどちょっと痩せたい!なんて女子が飲んだら逆効果です。信じるか信じないかはあなた次第ですが、防風通聖散ブームは危険だと思ってます。近くのドラッグストアでは1ヶ月分が6000円〜7000円前後で販売されてましたが…大して痩せない(かも?)の薬で、かつ痩せづらい体質になる(かも?)=体が冷える薬に対する金額ではないですね。
当院では現在、ダイエット目的での漢方治療については新規患者の受け入れは薬不足(防風通聖散ではないですよ、もちろん)のため停止しておりますのでよろしくお願いします。