超私的な疾患解説〜好酸球性副鼻腔炎〜
先日ユーチューバーのHIKAKINさんが好酸球性副鼻腔炎になり手術もしたとのことでYahooニュースにもとりあげられていました。副鼻腔炎というと主に細菌感染によって汚い鼻水が出る「いわゆる蓄膿症」が一般的ですが、好酸球性副鼻腔炎というのはかなり性質が異なります。一言でいうならば「アレルギーが主体となっておこる副鼻腔炎」です。膿のような汚い鼻水はでませんが、膠(ニカワ)のような粘度の高いオレンジ色っぽい透明な鼻水がでます。炎症の主体は篩骨洞という目と目の間にある副鼻腔であり、嗅覚障害が強く出ます。一般的な副鼻腔炎の治療はマクロライド系の抗生物質の少量長期投与を行い、治らなければ手術ですが、好酸球性副鼻腔炎の場合は手術が積極的に行われる疾患です。好酸球性副鼻腔炎の面倒なところは、手術しても術後治療をしないと再発してしまうことであり、再発予防のために定期的な通院に加えて、抗ロイコトリエン薬の内服、点鼻ステロイド、鼻洗浄を続ける必要があります。どうしても再発を繰り返す症例もあり、以前はかなりコントロールの悪い症例もありましたが、最近はデュピルマブという薬ができてからはかなりコントロールがよくなっています。デュピルマブは非常に高価な薬であり、継続使用するにはそれなりのお金が必要となりますが、難病指定を受ければ治療費を抑えることができます。
じゃあ、「自分はアレルギーもあって副鼻腔炎もあるから好酸球性副鼻腔炎?」と思うかもしれませんが、そうとは限りません。好酸球性副鼻腔炎の診断基準はかなり複雑であり摘出したポリープにどれくらい好酸球(白血球の一種)があるかとか、CTでの所見がどうとか色々あります。一般開業医での確定診断は困難なことが多く、CT検査および病理検査ができるような施設に限られることが多いです。
当院でも若干名ではありますが、他院で手術をした好酸球副鼻腔炎の方が通院されており、みなさん再発なく経過しております。難病ではございますが、ちゃんと治療を継続すれば大半の方が大丈夫な疾患です。HIKAKINさんがどういう状況かはわかりませんが、うまく疾患と向き合い治療を継続されることを願っております。