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風邪について真剣に語ってみる

  • 耳鼻科豆知識
  • 2024/06/09
風邪ってなんでしょう?これをちゃんと答えられる人はなかなかいないのではないでしょうか?一般的には「咽頭痛、咳、鼻水」の3症状が「ほぼ同時期に同程度」出現する状態をいいます。なので診察前の問診で「2日前から喉が痛くて、その後咳・鼻水が…」となればだいたいは「風邪だろうなぁ」と想像ができるわけです。
では風邪薬という言葉がありますが、実際は「風邪をなおす薬」ではなく「風邪の諸症状の緩和の薬」です。具体的に言えばカルボシステイン、トラネキサム酸、デキストロメトルファン、クロルフェニラミンマレイン酸といったところです。巷に溢れている風邪薬もだいたいが似たような薬の組み合わせでできています。なのでぶっちゃけていうと病院にきても薬局で薬を買っても、だいたい同じような薬になってしまうのです。
では風邪を引いたときに病院に来るメリットは?というと…「いわゆる風邪」ならばあまりメリットはありません。理由は上述の通りで出される薬が市販薬と大差ないからです。メリットをあげるとすれば本当に風邪なのか?を医師にしてもらえることです。病院にくれば「早く治す薬をもらえる」と思っている方もいらっしゃいますが、残念ながらないのが現実です。
風邪の原因の大半がウイルス感染です。なので抗生剤は効きません。抗生剤は細菌を殺す目的の薬なので細菌感染が起こっていない「いわゆる風邪」では無意味であり、むしろ逆効果です。一部の抗生剤(マクロライド系など)は抗炎症作用があるために使われることがありますが、ペニシリン系、セフェム系、キノロン系といった抗生剤は風邪に対しては意味をなしません。
風邪の状態で治れば特に抗生剤は不要なのですが、それが進行して咽頭痛→扁桃炎、鼻水→副鼻腔炎、咳→気管支炎となると抗生剤の出番となります。一般的には10 days markといって10日間治らなければ抗生剤が適応となることが多いです。それ以外にも単なる風邪では説明がつかない激烈な症状の場合は抗生剤を使用した方が良いです。その判断は医師でしかできません。誤解を恐れずにいうならば上気道感染については耳鼻科が一番その判断にはたけています。「喉が痛い」に対して「これは風邪症状だから抗生剤は不要」「これは扁桃炎になっているから抗生剤」と診断するのを耳鼻科医は得意としています。
最後に、、、風邪を治す薬があるのか?と言われれば、漢方薬が得意ですと答えてます。麻黄湯をはじめとした漢方薬はおそらくかなり強力な抗ウイルス効果がありますし、実際インフルエンザにも保険適応が通っています。ただ実臨床において「いわゆる風邪」の患者さんに漢方薬をだそうとすると結構な確率で嫌がられます。「粉薬いやだ」「どうせ効果ないんでしょ?」とか色々理由はありますが…。風邪に対しての漢方薬の優位性を説明しようとすると外来が回らなくなるので、「いわゆる風邪薬=諸症状の緩和の薬」を出して終了となることが多いです。このブログをみて「風邪をひいたら漢方薬のんでみよう」と思ってくれる人が一人でも増えたらいいな〜と思っております。ちなみに「風邪に対する漢方薬=葛根湯」ではありませんのであしからず。そのへんは医師の腕の見せ所です。

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