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超私的な処方解説~小児の抗生剤~

  • 耳鼻科豆知識
  • 2023/07/19
7月にはいり急性中耳炎などの感染症が増えてきました。中耳炎については異常な数でありやや困惑しているレベルです。
さて、今回のお題は小児の抗生剤です。一部の保護者さんは「風邪症状で子供が小児科に受診→治らないから耳鼻科で抗生剤をもらう」という風に考えているように思えます。実際抗生剤を出さないとやや不満そうな顔をする人もいるのが実際です。
当たり前ですが風邪症状(咳、咽頭痛、鼻水+発熱)はほほほぼウイルス感染によって起こります。ウイルス感染なので抗生剤は全く効きません。「風邪だから抗生剤だしておきますね」は一般的には間違いです。ではどういうとき抗生剤を使用するのか?というと明らかな膿性鼻汁や膿栓を伴った扁桃炎や溶連菌感染、中等症以上の中耳炎などです。あとは10 days markといって風邪症状が10日以上遷延している場合も抗生剤投与の対象となります。それを判断するのは医師であり、抗生剤の適正使用は医師に課せられた使命です。よって、「小児科の薬で治らないから抗生剤ください」は必要条件ではありますが、十分条件ではありません。
一方でこういう意見もあるのでは?と推察するのが「ごちゃごちゃ言ってないでとりあえず出してくれればいい」というもの。これがまかり通っていたのが20年ほど前まででしょうか?なんでもかんでも抗生剤という時代がありました。以前勤めていた某病院の近くの小児科は日本一ある抗生剤をだすと有名になったほど。今となっては笑い話にもなりません。
抗生剤の有害事象についてはおおきくわけて2つ。まずはAMR(薬剤耐性菌)の問題。AMRで検索すると結構怖いこと書いてあります。これは世界レベルでの問題です。ご興味あれば調べてみてください。もう一つが子供本人に直結しますが免疫力低下や喘息などのアレルギー性疾患へのリスクです。すでに論文も出ておりますが低年齢のときに抗生剤を多用すると気管支喘息になる確率があがるといわれています。
最後、これもいつも親御さんとのトラブルの原因となるのですが抗生剤の投与回数の問題です。「保育園だから昼の薬は無理」と結構な割合で言われます。1日2回投与の抗生剤はなくはないのですが、基本となるペニシリン系抗生剤は1日3回投与が原則です。では1日2回の投与の抗生剤はダメなのか?というと…強すぎるからです。小児急性中耳炎の診療ガイドラインなどみてもらえればわかりますが、小児で1日2回投与の薬(クラバモックス、オラペネム、トスフロキサシンなど)は重症例などに使用する抗生剤です。最初から強い抗生剤つかえばいいじゃん!と思うかもしれませんが、不必要にそういった抗生剤を連用すると耐性菌ができたときに対応できなくなったり、腸内細菌の破壊をおこし下痢や免疫力低下につながります。
保育園もいろいろあるので投薬が難しいことは重々承知しております。投薬自体がかなり手間がかかりますし、大人数になると誤投薬のリスクも出てきます。が、子供たちの未来のため!と思ってご検討いただければ大変助かります。
最後に…どうしたら抗生剤を極力使用せずに済むかというと・・・・「鼻吸い」です!!



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