超私的な漢方処方解説~加味逍遙散~
久しぶりの漢方処方解説。今回は女性の漢方薬の代表的な処方である加味逍遙散です。
この処方、江戸時代の漢方医の百々家の口訣をまとめた本によると「女性の色々訴える方にはとりあえずはこれ!」みたいな感じで書かれているくらい、かなり万能な方剤です。
元々は逍遙散という薬があり、それに牡丹皮と山梔子を加えたものなのですが「中医処方解説」によれば①寒くなったり、熱くなったりする②のぼせる、顔が赤くほてる③いらいら、怒りっぽい、不眠などに適応があるとされています。
また、小川恵子先生著の「経方医学への第一歩」によると加味逍遙散は肝陽上亢に対する処方であり「のぼせ、いらいら、怒りっぽい、めまい、耳鳴、頭痛、顔面紅潮、膝腰がだるく無力etc」の症状に有効とされています。
「逍遙」とは「気ままに歩き回る」という意味であり、症状が色々変遷することを意味しています。一つの症状だけではなく色々な症状に対して使う薬ということなんですね。
この薬の不思議なところは下剤系の生薬は入っていないのですが、何故が便通がよくなります。
頻用されるこの薬ですが、一つ注意点があります。それは山梔子が入っていることです。山梔子は清熱作用がありこの処方の肝でもある大事な生薬なのですが、とりすぎると腸間膜静脈硬化症という合併症を引き起こします。加味逍遙散でいうと1日7.5gを5年間飲み続けると危険ゾーンに入ります。
漢方は副作用がないと思われている方も多いですが、そんなことはありません。ちゃんと医師の指導のもと適切に飲まないと大変なことになりますのでご注意ください。
追伸:土曜日の地震怖かったですね。10年前を思い出しました。クリニックは幸い被害はなく診察室の雛人形(?)も無事でした。