超私的解説な漢方処方解説~抑肝散~
今回のテーマは抑肝散です。抑肝散というとアルツハイマー病などで有用とされており、漢方薬という範疇を超えて西洋医学的にも市民権を得ているお薬となっています。抑肝散の「肝」とは五臓六腑の「肝」のことを指していますが、西洋医学で言う肝臓とは別物で概念的な臓器となっています。この「肝」は怒りの感情を司っており、肝の失調が起こるとイライラしたり怒りっぽいといった症状が出てきます。また「肝」は「気血水」の「血」にも大きく関わっており、「血」が不足すると眼が疲れやすい、筋肉痛、耳鳴、めまいといった症状を引き起こします。
抑肝散は釣藤鈎という生薬が主成分ですが、こちらで肝の失調を整えてイライラといった感情を抑える効果があります。また不眠症にも適応があり、眠りの質が悪い患者さんなどには大変良く聞きます。こちらの良いところはいわゆる睡眠薬とは違い依存性がないので安心して使える点です。
無論、お薬ですので副作用はあります。その代表例が偽アルドステロン症であり血液中のカリウムが低下し、血圧が上昇することがあります。よって漫然と内服することは危険ですが、血圧などに注意しながら内服すると「眠りの質がよくなった」「こんなに眠れることは久しぶり」といったご意見をうかがいます。眠りの質を保つことは健康な生活を送る上でも必要不可欠なものです。睡眠薬に頼らない治療も漢方薬では可能となる場合があります。