改めて抗生剤について考えてみる
11月17日水鏡会(水戸市の耳鼻咽喉科の会)の学術講演会に参加してきました。特別講演は感染症微生物学の権威であり長崎大学の栁原教授の「Withコロナ時代の呼吸器感染症診療」でした。COIVD19の最新の知見から始まり、上気道炎(咽頭炎、鼻副鼻腔炎、気管支炎)に対する抗生剤の適切な使用法についての講義でありました。色々あったのですが、上気道炎の9割はウィルス感染であり抗生剤は不要であること、抗生剤を適切に使用し耐性菌を作らせないようにすることの重要性の2点だったと思います。よく患者様の話を聞いていると「風邪と言われて抗生剤もらった」というのを良く聞きます。間違いではないのでしょうが、確率論からいうとその抗生剤の9割は不要なものです。上気道炎症状に対して抗生剤をだす、ださないの判断が医者の腕のみせどころだと思います。また抗生剤についても適切に使用しなければ耐性菌を生み出すことになります。何も対策しなければ2050年には全世界で1000万人の方が薬剤耐性菌で亡くなるという試算も出ています。この数は癌で亡くなる人数よりも多いものです。自分たちの子供、孫の世代に負の遺産を残さないためにも抗生剤の適切使用は必要不可欠なものです。当院では特に小児に関しては抗生剤を処方後、必ずといってよいほど再診をお願いしています。ちゃんと治っているか?を確認し耐性菌を極力作らないようにするための対策です。「治っていたと思ったので来ませんでした」とか「受診忘れてました」などの理由で再診されない方もいらっしゃいますが、自分の子供のため、さらには将来のためにも再診をお願いできれば幸いです。